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2003年11月18日
明日のふるさとづくり 星ふる学校・くまの木??栃木県塩谷町
大型望遠鏡で星空を眺める若者たち。天体観測は最も人気がある
石
の門をくぐると、古ぼけた木造校舎が待っていた。コスモスの揺れる校庭には、ブランコや鉄棒、校舎正面の玄関わきには、薪を背負いながら本を読む二宮尊徳像が立っている。かつての教室には手あかのついた木製の机といす、黒くくすんだ地球儀や黒板、セピア色に変色した「尋常小学校修身」の教科書も。どこからか先生や友の声が聞こえてきそう。卒業生でもないのに、なぜか懐かしさがこみ上げてきた。
◇よみがえった「学舎」??修験の地、豊かな湧水に恵まれ
旧町立熊ノ木小学校。1999年3月、廃校となり、昨年4月、宿泊型体験学習施設「星ふる学校 くまの木」に生まれ変わった。1874年、創立。戦前、林業で栄え、戦中は、学童疎開、終戦直後もベビーブームで、47年には二つの分校を併せ、367人が在籍したこともある。その後、少子化で98年に43人となり、翌年125年の歴史に幕を閉じた。この間、巣立った卒業生は、2888人。少人数のため教師の目は行き届き、上級生の面倒見の良さも加わって家庭的な雰囲気が校風だったという。廃校後、地元からは「思い出の詰まった学校を地域のシンボルとして残してほしい」との声が町に寄せられ、「旧熊ノ木小学校跡地利用検討委員会」が発足した。生涯学習施設、レストランへの転用など多くの案の中から、宿泊型体験学習施設に決まった。
◇木造、懐かしさ漂わせ
決め手となったのは、現在、「くまの木」を運営するNPO法人「塩屋町旧熊ノ木小学校管理組合」理事長、遠藤正久さん(54)の熱意だった。当時、群馬県の化学メーカーに勤務するサラリーマン。仕事はおもしろく、待遇に不満もなかった。しかし、40代半ばを過ぎ、「50歳になったら企業社会とは別の人生を歩みたい」との思いが大きくなっていた。東京生まれの東京育ち。どこかに自然へのあこがれとロマンがあったのだろう。「廃校を使った体験学習施設を運営したい」。夢は膨らんだ。46歳の時、全国310市町村に廃校予定を尋ねる手紙を送り、休日には候補地を見て歩いた。
変な宗教団体と間違われたり、迷惑がる市町村が多い中で、塩谷町は別だった。熊ノ木小学校に、廃校の予定があり、「地元の人を紹介してもいい」との好意的な回答。実際、現地を訪ねてみると、校舎の前には田んぼが広がり、背後にはうっそうと茂った森がある。大きさも手ごろで、しかも木造校舎。日本のふるさとの原風景がそこにあった。近くに、競合する公営施設もなく、「ここなら採算もとれる」と思った遠藤さん。検討委員会にオブザーバーとして参加させてもらい、これまで温めてきた構想を説明した。
町も生涯学習施設としての活用を考えていたこともあり、すんなり遠藤さんの案に決まった。この間、妻順子さん(53)には、町の方針が決まる直前まで告げなかったという。運営委員会が発足し、具体化への準備が始まった。厳しい財政事情を理由に町の方針は「公設民営」。増改築費は、町が負担し、運営はNPOに。「元の校舎をできるだけ残したい」という遠藤さんの希望もくんで、当時の姿をあまり変えなかった。五つの教室を洋室と和室にし、44人が泊まれるようにした。トイレも水洗式に変え、理科室は調理室に改造、新たに浴室も設けた。
◇星空観察通じ、都会と交流
最も頭を悩ませたのが、体験学習の内容。遠藤さんたちは、周囲が山や川、水田など豊かな自然に囲まれている点に着目。主な体験学習として(1)バードウオッチングやホタル、天体などの自然観察(2)シイタケ栽培や炭焼きなどの農林業体験(3)ワラ細工やぞうり作りなどの伝統工芸体験(4)影絵やリサイクルなどの文化体験(5)ソバ打ちやミソ作り、餅つきなどの郷土料理体験??などをメニューに選んだ。特に、自然観察は00年12月、当時の環境庁などが実施した「星が良く見える場所 全国冬季調査」で、旧熊ノ木小跡地での観測データが全国トップとなったのをヒントに天体観察を目玉とした。「星ふる学校」の愛称も、きれいな夜空をイメージしたという。校庭には、口径25センチの望遠鏡を備えた天文台ドームを設置した。
遠藤さんの目標は、「都市との交流を通じ地域の活性化に貢献すること」。体験学習の指導者は、自営業、元教師、サラリーマンなど知識、経験の豊かな約50人。影絵は、地元の主婦グループ「こんぺいとう」、バードウオッチングは、野鳥の会会員、天体観測は星座観測が趣味の人が担当している。地域に配慮した運営にも気を配っている。7人のパートは地元から雇用し、施設で使う食材も、地元の直売所からできるだけ仕入れている。昨年4月のオープンから約1年半。年間の利用者は、約4000人。4割が東京など首都圏からの客だ。帰る時に来年の予約をする人も出てきた。
都市との交流は、まだまだ不十分だが、少しずつ変化の兆しはある。散歩の客に進んで声をかけるお年寄り、取れたての野菜を施設に持ち寄る人……。そこには「何とか施設がうまくいってくれれば」という地元住民の熱いまなざしがある。「まだまだ課題ばかり。体験学習の中身も、立地条件を生かした『自然観察』に比重を移したい」。「それにNPOとしての社会貢献もしたい。例えば子どもの施設としての有効活用。『くまの木』が引きこもりや登校拒否の子どもたちの安らぎの場になれたらいいですね。それには、もう少し落ち着けるフリースペースがあったらと思う。5年計画でやっていきますよ」。明日を見つめる遠藤さんの目は燃えていた。
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【ことば】
◇塩谷町
東京都心から約120キロ、宇都宮市から北へ28キロ。町の総面積の約60%を山林が占める自然豊かな町である。歴史は古く、約1万年前の旧石器時代には、人類が住んでいたことが考古学的な資料から証明されている。東北自動車道や日光宇都宮有料道路からのアクセスもよく、鬼怒川温泉や塩原温泉、日光、那須などの観光地にも1時間弱。町のシンボルは、高原山。標高1795メートル。昔から修験の地として栄えてきた。高原山ろくの中腹から湧(わ)き出るのが「尚仁沢湧水(ゆうすい)」。日量6万5000トンという日本一の湧水量を誇り、全国名水百選にも選ばれている。「くまの木」は電話0287・45・0061。
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