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[海幸山幸・東海の食を訪ねて]豊橋市・メロン 香りより甘さ重視/愛知

東三河地方の豊橋、田原両市や渥美町などは、愛知県内随一のメロンの産地。渥美メロン、三河メロンなどと呼ばれ、中部、関西圏に出荷される。生産高は、2市1町で年間約49億円(02年度)で、全国5位の県内生産高の約80%を占める。温暖な気候に加え、昭和40年代初めのかんがい用水整備で、温室栽培によるメロン農家が増えたのが理由。5月下旬から8月中旬にかかるこの季節が、収穫の最盛期だ。

 「今年は、種まきと生育期に雨が少なく天候に恵まれたから、昨年より大粒で10?15%は安くなるよ」と話すのは、豊橋市で特産物直売所を営む中川茂さん(56)。今年は5月26日にメロンの初売りを始めた。約100平方メートルの店内には、常時10種類以上のメロンを並べる。初日は3000玉以上を販売、今年も滑り出しは好調だ。
 
 メロンは、王様と呼ばれる「マスクメロン」▽品種改良が進み網目の盛り上がりの少ない「ネット系メロン」▽表皮が黄色や白に分かれて果肉の色も豊富な「ウリ系メロン」??などに分かれる。ウリ系は約50種類もあり、強い甘みや淡泊な味わいなど個性豊かだ。

 かつて、メロンの売りは香りだったが、最近は「香りより甘さ重視で、より庶民的なウリ系が好まれる」傾向という。同店の販売価格は、ウリ系1玉300?500円で、香りの高いマスクは1玉1500?1800円。お値打ちなウリ系が伸びるのも当然といえば当然だ。

 メロンの原産地は、北アフリカや中東。日本ではネットのないマクワウリがこれに当たる。東海地方では40年ほど前まで、黄色い表皮のキナウリ(またはキウリ)が、スイカに並ぶ夏の人気者だった。現在のメロンは、この二つを掛け合わせたものが主流となった。

 豊橋市でメロン作り30年の中川勝美さん(65)の温室に立ち寄った。背丈約1・3メートルの苗が支柱で支えられ、1本に1玉のメロンの苗が並ぶ。3・3平方メートル当たり7本が平均だ。味を良くするために、一つ残してすべて摘花する。「一帯の農家は昔、イモと菊の花ぐらいだった。用水が引けたお陰でメロンが広がった」と、勝美さん。メロンは室温調節と水加減が命。「(網目の整った)べっぴんさんを作るのは、子育てと同じで難しい」と笑った。

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 【ネットの正体】
 果実の成長過程で起きるひび割れで、果汁の固まり。交配後、2週間ほどで出始め、最初は縦じま、続いて横じまが加わる。果肉と表皮のバランスの崩れで生まれるもので、固すぎても柔らかすぎてきれいにならない。生産者によると「水加減がすべてで、一番、神経を使う」。