ナタネ(菜の花)を栽培している滝川市北滝の川の農業、中野義治さん(49)が道内の生産者では初めて搾油機を購入し、食用油の生産を始めた。ナタネ生産への国の助成制度が今年限りで打ち切られる恐れがあり、ナタネ農業は存続できるかどうかの瀬戸際。他の農家に波及すると、滝川が「純粋ナタネ油の古里」となる可能性を秘めた試みと言えそうだ。
滝川保健所の設置許可を先月受け、試作を始めた。カスを除去するろ紙の選定に苦心した末、収穫したナタネを焙煎(ばいせん)し、蒸して搾ると黄色みがかった香ばしい油が取れた。てんぷらやドーナツがとてもおいしく揚がり、知人にも「商品化したら買いたい」と好評だった。
生産者名と「混じりっけなしのナタネ油」の意味を込めた商品名を検討中。3月ごろの発売を目指す。値段は275グラム入り800円の予定。普通の食用油より高いが、「美しい菜の花畑から生まれた」ことと「味と香りのよさ」「本物」「純粋」の四つの強みを押し出す。
中野さんの圧搾油は、溶剤を加えて化学的に抽出する市販品と違い、酸化を防止するビタミンEやレシチンが残っているため、てんぷら油なら差し油して何度も使える。野菜炒めに使うと甘さが引き立ち、焼き肉・焼きソバでは味がまろやかになり、風味も増す。
滝川地方は約150ヘクタールにナタネを作付けし、青森県横浜町と並ぶ国内の主産地。しかし、60キロ当たり約7000円の助成金がなければ農家の収入は4000円程度しかなく、作付け減少は避けられない。
中野さんが搾油に踏み切ったのは、一時は消滅したナタネ栽培の復活を先輩と一緒に推進した誇りから。現在の作付面積は約4ヘクタール。「助成金がなくなっても栽培はやめない」との決意がこもっている。
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