みかんの生産で全国的に知られる三ケ日町で、農業者の団体がみかんの花で作った「みかんコロン」を試作した。香料の専門家も「あまり聞いたことがない」というみかんの花による香水はあめ色の液体で、甘い香りが特徴だ。今後、みかんの販売促進キャンペーンなどで香水を利用するが、背景には消費者の「みかん離れ」を何とか食い止めたい思いがある。メンバーたちは「農家も今後は情報を発信し、みかん再発見のきっかけにしてもらいたい」と話している。
「みかんコロン」を作ったのは、同町自立経営農業振興会(石原和夫会長)の柑橘部会のメンバーだ。同部会では、石原会長が3年前に雑誌に載っていたバラの香水の作り方をまねて個人的にみかんの香水を作ったところ周囲に好評で、同振興会の発足20周年の目玉として企画された。
白いかれんなみかんの花が咲くのは5月の1週間?10日間だけ。つぼみや満開になった花からは匂(にお)いをうまく抽出できないことが分かっており、同部会のメンバー17人が協力して花を摘み取った。約1リットルのガラス瓶に700?800個の花を入れてウオツカを注ぎ、2週間暗い場所に保管する。あめ色になった液体をフィルターでろ過して不純物を取り除き、最後にエッセンシャルオイルを入れて完成させた。
永田正文部会長は「5月は三ケ日の町全体がみかんの花の甘い匂いに包まれるが、それに近いものができたと思う」と自信満々だ。今月18日に名古屋市であった販売促進キャンペーンの際にみかんを無料配布し、コロンも試してもらった。
今回の香水作りの背景には、消費者の「みかん離れ」がある。県内で三ケ日町のみかん生産額は4割近くを占めて他市町を大きく引き離して断トツの1位だが、都道府県別ではトップを奪われて久しい。また、さまざまなフルーツが海外から輸入されるようになってみかんの消費量自体が落ち込んでいる。農林中金総合研究所のリポートによると、00年のみかんの国内消費量はピークだった73年のわずか約4分の1に減った。
「三ケ日」という強いブランドがあっても、町内の農家も危機感は強い。石原会長は「みかんの花を見たことがある人は少ないはず。本物の『匂い』で示すことは農家だからこそできる情報提供。コロンをさまざまな機会で消費者に試してもらいたい」と話している。 |