大賞

農業体験できる民宿経営、稼木きわ子さん /鹿児島

春には山菜や梅、夏にはブドウやナシ、秋冬にはみかんやキンカンの収穫??。1年を通し、農作業が体験できる民宿「ファーム・イン稼木」を経営する。朝晩は、家庭菜園で採れたらっきょうやニガウリの漬物など、旬の品が食卓を飾る。

 20年ほど前から、夫繁夫さん(64)と果樹の観光農園を経営してきた。91年、欧州で農家民泊を体験する農業者対象の県の事業に参加。酪農や果樹園などの農家をたくさん見学した。フランスでは、山が丸ごとワイン用のブドウ畑。規模に圧倒された。各農家では品評会での表彰状が大切に飾られていた。「もっと仕事に誇りを持とう」と思い直した。

 帰国後、「大切に育てた作物でもてなし、お土産にもいっぱい買ってほしい」。民宿経営の夢が膨らんだ。だが農園の借金もあり、資金繰りがつかなかった。60歳を前に「人生は自分で決める。夢を抱えたまま終わりたくない」と一念発起。新たに借金を積み、夫婦で民宿を立ち上げた。

 薩摩川内市の中心から車で40分ほどの静かな山間地。自宅の離れを改築した民宿は、杉を使い、広間の窓からは明るい光が差し込む。客は、雑魚寝なら20人は寝られる広間で食卓を囲む、アットホームな雰囲気だ。10種近くの作物を栽培する農園は計140アール。夕方は、涼しい風に吹かれながら散策するのも心地よい。「もっと多くの人に民宿を知ってもらいたい」。ファーム・イン稼木