八十八夜とは

「八十八夜」とは、立春から数えて88日目のことです。
立春を第一日目として数えて88日目に当たりますが、平年なら5月2日、閏年では5月1日になります。
もっと長い間で数えた場合は、数十年に1度5月3日のこともあるようですが、普通の年の数え方で5月2日と覚えておけば間違いないでしょう。

3日後には「立夏」になりますが、春と夏の端境期とも言える時期です。
「別れ霜」「泣き霜」などの言葉があるように、遅霜が発生する時期にも当たっていて、農家には注意の必要な時期でもありました。
そのために二十四節気以外に、生活に根ざした雑節が作られたのですが、八十八夜も日本独自の雑節の一つです。
雑節は他にもあり、「節分、入梅、半夏生、二百十日、土用、彼岸」などがそうです。

八十八という字を重ねると、米と言う字になりますが、その米を作っていた農家の人々にとって、八十八夜は特別な日とされてきました。
地方によっては気候に差がありますが、おおむねの目安としての八十八夜は重要な日とされていて、現在でも東北のある地域では、豊作を願う様々な行事も行われているようです。

この八十八夜の頃から、夏への準備が始められる「縁起の良い日」とされています。
霜も降りなくなり、安定した日々が続くようになりますし、茶摘や苗代のもみまき、蚕のはきたて、野菜の移植のような農作業の目安とされました。
地域によっては、今でも農作業の開始を祝う『神事』が行われることもあるようです。
現在のように、天気予報がその土地土地で発達した時代でも、このように八十八夜は大切にされているのですね。。

また、瀬戸内では豊漁の続く時期としての「漁の目安」とされたり、沖縄地方の島では「とびうお漁の開始の時期」ともされています。
陸の農業だけではなく、海の漁業でも、大切な節目とされていることが分かります。
天然自然の昔からの暦には、先人達の知恵と祈りが込められているからなのでしょう。

八十八夜のお茶

この日の朝に摘んだお茶は、上等なものとされています。
特に新芽を手で摘んだ上質なお茶は、手摘み茶として貴重な「新茶・八十八夜の茶」として喜ばれます。
この後の茶摘は、ハサミや機械での大量生産になりますから、いかに八十八夜の茶が特別なものか分かりますね。

この日のお茶を飲むと「長生きできる」などの言い伝えもあるように、八十八夜に摘んで作られるお茶には、「不老長寿の縁起物の新茶」として特別珍重もされてきました。

もちろん、言い伝えばかりではなく、実際に気象条件なども考えた場合、この時期のお茶は極上のもののようです。
お茶の新芽には、秋から冬を越した期間、寒さに耐えて貯えられた成分が溢れています。
特有の清々しい香りが満ち溢れた一杯のお茶が、体中に初夏の息吹を吹き込んでくれるからでしょうか。

実際に一番最初に煎れたお茶は、二番茶以降のものより、旨み成分を多く含んでいて美味しいのだそうです。
今年は少し奮発をして、コーヒーや紅茶ではなく、日本茶で八十八夜の新茶を飲んでみませんか。
「ユネスコの世界遺産・和食」には、日本茶が一番合うのは当然のこと。
しみじみと日本に生まれた幸せを、実感できることでしょう。