大晦日の深夜、日付が変わる0時をはさんで突く鐘のことです。
地方によっては、除夜の鐘を寺院に突きに行ったり、聞きに行ったりするようですが、一般的にはテレビやラジオの放送で見聞きするものになっているようです。

この鐘の音を聞くことで「新年が明ける」と感じる人は多いのではないでしょうか。
それほど「除夜の鐘」と「新年」は深い関係にあるともいえます。

仏教の行事

仏教では「鐘を突く葉ことには煩悩を祓う意味があった」そうです。
仏教の修行は積み重ねることで煩悩を取り除き、悩みや苦しみから解き放されて悟りを開く、とされています。

厳しい修行を積んではいない凡人でも、除夜の鐘をつくことで心の迷いや穢れを祓う力がある、という信仰が伝わった結果だとか。
そういう信仰が儀式として伝わり、現在のような大晦日に鐘を打つ行事になったようです。

元来鐘は、梵鐘と呼ばれる仏教の儀式に使われる大事な仏具でした。
仏教では、お盆と暮れの年二回、先祖を祀る儀式があったそうです。
それが時代を経る内に、『お正月は歳神様に豊作を祈る」という神道信仰に移ったのだとか。

『お盆の行事・儀式』だけが長く受け継がれたようですが、「除夜の鐘」だけは年末の行事として現在まで伝えられているのです。

百八つは煩悩の数

仏教の行事ですから、鐘の音は百八つの煩悩を祓うためと言われてきました。
煩悩とは、ひとの心を惑わせたり、悩み苦しめたりする「負の心の働き」のことを指しています。

百八つ全ての煩悩は書ききれませんが、まとめるならば次のようになります。
『欲望』肉体的なもの、精神的なものを含めますが、食欲・色欲・我欲など多くが上げられます。
『怒り』『執着』『猜疑』など、ひとつひとつ数えたら108見つけられるでしょうか。

一年間を表すともされています。
月の数の12、二十四節気の数の24、七十二候の数の72を足した総数が108となるので、1年間を表すともいわれています。

俗説には「四苦八苦・4×9+8×9」と言うものがあるそうです。
一つずつ数えて厭なことを思い出すよりも、「百八つはたくさん」と片付けたほうが心が落ち着いてよいかも知れません。

31日の大晦日の内に百七つを突き、1日が明けた後に百八つめを突くのが習わしです。

除夜の意味

除夜とは、「除日の夜・じょじつのよる」を指していうそうです。
「除」という字には、「古いものを捨てて新しいものに移る」と言う意味があるのだそうです。
古い年を除き去って新年を迎える日と言う意味と、一年で一番最後の日の意味もあり、「大晦日」のことも指しているとか。

世界各国の新年の祝い方はそれぞれですが、日本の新年の迎え方は静寂の中に響く『除夜の鐘』の清浄な響きから始まるようにも思います。