松阪城は蒲生氏郷が築いた石垣作りの名城
伊勢を領有していた蒲生氏郷が、天正日年(1588)に築いた城が松阪城である。当時氏郷は伊勢湾に面した松ヶ島城を居城としていたが、城下町の発展を考慮し、新たに城を築いた。
安土城の築城にも参加した氏郷によって建てられた松阪城は、荘厳さ、堅牢さなどから「近世城郭の先駆けとなる名城」として高く評価されている。現在も氏郷が築き上げた石垣は保全されているが、一部は昭和から平成にかけて大規模な積み直しが行われた。
縄張は本丸、二の丸、三の丸のほかに2つの曲輪を持つ梯郭式平山城。各曲輪は石垣、石塁で固まれている。本丸には三重の天守があったとされるが、正保元年(1644)に倒壊したと伝えられ、その形状は不明である。
美しく詰まれた石垣は、氏郷が近江固から連れてきた石工集団に築かせたものだ。建築物としては隠居丸と呼ばれる曲輪から移築された米倉、御城番屋敷がある。昭和の終わりごろには天守再建も計画されたが、地元住民から賛否が相次いだ結果中止されている。しかし、石垣に沿い当時の縄張を歩くだけでも十分に楽しめる名城である。