古代インドのクベーラ神
古代インドでひろく信仰された、クベーラ神という神があった。この神は、財宝福徳をもたらす神として祭られた。
クベーラ神は、ヴァイシュラヴァナ神という別名をもっていた。このクベーラ神が仏教に取り入れられて、宮昆羅大将となった。これと共にヴアイシュラヴァナ神という別名が、その音によって毘沙門天と訳された。
財運をもたらすインドのクベーラ神信仰が、毘沙門天信仰のもとなのである。
日本の金毘羅信仰
宮昆羅大将と昆沙門天は、本来は同一のインドの神をさす言葉であった。ところが宮毘羅大将に関する仏典と昆沙門天のことを記した仏典が別々に訳されたために、中国では宮昆羅大将と昆沙門天が異なる仏のように考えられた。
そのため日本には、宮昆羅大将の信仰と昆沙門天信仰が別々に伝わった。昆沙門天は、四天王の一つとして飛鳥時代から祭られていた。これに対して宮毘羅大将は密教が広まった平安時代に、密教の呪術にまつわる仏として広められた。
讃岐国の琴平山の山の神として祭られていた大国主命が、平安時代末頃に密教の呪術を取り入れて宮毘羅大将と習合した。これによって仏教色のつよい金刀比羅宮ができた。
金刀比羅宮は瀬戸内海航路の要地にあつたために、室町時代に航海安全の神としてひろく信仰されるようになった。
さらに金刀比羅宮の御師が積極的に布教したことによって、金刀比羅宮は江戸時代に福の神として最盛期を迎え多くの参詣者を集めて賑わうことになった。