幸福をつかさどる南極星
福禄寿と寿老人は、中国で祭られた道教の神である。道教は御利益のあるさまざまなものを神として祭ったが、福禄寿も寿老人も長寿を授ける神とされた。
南極星、もしくは老人星と呼ばれる星の信仰が、別々に発展して福禄寿と寿老人の神をつくり出した。南極星の神が福禄寿や寿老人の形をとるようになるのは、中国の南宋代(1127―1279)、日本の平安時代末に相当する時期であると考えられる。
南極星は人間の寿命をつかさどり、富や好運を授けてくれる星といわれた。
二番目に明るい恒星
北極星は真北を表わす星だが、日本からは真南を示す南十字星は見られない。南極星は地球からみて、北極星の反対側にある星ではない。南極星は、西洋天文学でカノープスと呼ばれた恒星である。
竜骨座の主星であるカノープスは、夜空でシリウスに次いで明るい星である。その星は西洋で占星術に用いられ、文学作品の中でもしばしば取り上げられた。最初にカノープスに注目したのは、紀元前九世紀から紀元前八世紀にかけて栄えた古代バビロニアの学者だと推測される。バビロニアで生まれた占星術が、インドやギリシャに入ってさまざまに展開した。
中国でも古くから天体観測が行なわれていたが、中国の学者はシルクロードから入ってきたインドや西洋の占星術を意欲的に学び、中国古来のものと融合していった。